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クリニック承継について|M&Aの相場やとメリット
クリニックの事業承継は、経営者の高齢化や後継者不足など、多くの課題を抱えています。そんな中、M&A(事業承継)の活用が注目されています。
クリニックM&Aは、譲渡側にも譲受側にも多くのメリットがあり、適切な手法を選べば、経営の円滑な移行を実現できます。
本記事では、クリニックのM&Aに関する相場やメリット、そしてその活用方法について詳しく解説します。
クリニックにおける事業承継の必要性
医療業界では、医師の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。厚生労働省の調査によれば、病院開設者および法人代表者の平均年齢は年々上昇しており、平成12年の61.5歳から平成20年には63.1歳に達しました。
医療業界では、医師の高齢化と後継者不足が深刻な課題となっています。厚生労働省の調査によれば、病院開設者および法人代表者の平均年齢は年々上昇しており、平成12年の61.5歳から平成20年には63.1歳に達しました。
一方、診療所開設者および法人代表者の平均年齢は、平成12年以降59.5歳前後で推移していますが、80歳以上の割合が増加傾向にあります。具体的には、病院では231人から487人、診療所では2,884人から5,632人と、いずれもほぼ倍増していることがわかります。このような背景から、医療業界全体で後継者問題がさらに顕著になっていると言えるでしょう。
参考:厚生労働省調査 病院・診療所経営者の高齢化
また、日本医師会の調査によると、後継者がいない、または意思確認をしていないクリニックの割合は75.9%に達しており、全業種平均53.9%を大きく上回っています。このような背景から、事業承継を目的としたM&Aへの関心が高まっています。
参考:日本医師会 医業承継実態調査
後継者不足の背景には、以下のような要因があります。
- 医師の子どもが医療の道を選ばないケースが増加
- 医療業界の労働環境や経営リスクの負担感
- 地方医療機関における人口減少と需要の減少
クリニックの事業承継方法
クリニックの事業承継は、経営者の高齢化や後継者不足が深刻化する中で、医療機関の存続と地域医療の維持において重要な課題となっています。
親族内承継や院内承継といった従来の方法に加え、近年ではM&Aを活用した事業承継が注目されています。それぞれの方法には特徴やメリットがあり、クリニックの状況や経営者の意向に応じた最適な選択が求められます。
親族内事業承継
クリニックの事業承継として、親族内での引き継ぎは伝統的な方法の一つです。特に子どもや親族が医師である場合、スムーズな承継が可能ですが、医療資格を有する後継者がいない場合は難航するケースもあります。また、後継者育成や経営意識の共有が重要な課題となります。
院内承継
クリニック内で働くスタッフや医師に承継する方法も選択肢の一つです。現場を熟知しているため、運営の継続性が保たれやすいという利点があります。一方で、承継に際して契約や条件の調整、資金調達などの準備が必要です。
M&A
近年注目されている方法として、M&Aによる事業承継があります。後継者が親族や院内にいない場合、第三者に事業を売却することで、クリニックの存続を図ることが可能です。
M&Aでは専門的な知識が求められるため、信頼できる仲介業者やアドバイザーのサポートが不可欠です。また、適正な譲渡価格の設定や、地域医療への影響を考慮した取引が重要です。
クリニックで活用されるM&A手法
M&Aを活用した事業承継は単に事業の引き継ぎを可能にするだけでなく、地域医療の継続や経営基盤の強化にも寄与するため、多くのクリニックが検討しています。
M&Aには主に以下の手法があります。
事業承継
事業譲渡は、医療機関が運営する事業全体または一部を、他の法人や個人に譲渡する形態です。この手法では、開設者の変更が必要となり、次のような手続きが求められます。
- 該当地区の保健所・厚生局・都道府県への届け出
- 賃貸借契約や雇用契約、リース契約の再締結または名義変更
また、事業譲渡による対価は、譲渡を行った法人が受領するため、法人税が課されることになります。損益通算や法人税の負担を考慮し、役員の退職慰労金を同時期に支給するケースも一般的です。これらの複雑な手続きや税務面での対応には、専門的なアドバイスが不可欠です。
法人譲渡
法人譲渡は、医療法人そのものを引き継ぐ形式で、社員や理事の変更により承継を行います。この方法は事業譲渡とは異なり、次のような特徴があります。
- 理事長や理事の変更のみで承継が完了するため、比較的簡便
- 新規の開設許可や保険指定手続きが不要
- 契約書上の代表者変更や行政への届け出が必要
対価の支払い方法としては、出資持分の買取や退職慰労金の支給など、複数のスキームを組み合わせることが一般的です。ただし、具体的な手法や支払い条件は法人ごとの状況に応じて異なります。そのため、早い段階でアドバイザーや税理士への相談が推奨されます。
クリニックM&Aの活用メリット
クリニックM&Aの活用は、譲渡側・譲受側の双方にとって多くのメリットをもたらします。
譲渡側のメリット
クリニックM&Aを利用することで、創業者は経営の譲渡により創業者利益を得ることができます。後継者不足に悩む医療機関にとっては、地域医療を維持しながら課題を解決する方法として効果的です。
さらに、経営の重圧から解放されることで、新しい趣味やライフスタイルを追求できるセカンドライフの可能性が広がります。
譲受側のメリット
譲受側にとっては、ゼロから開業するよりも低コストで医療事業を始められる点が魅力です。また、既存のスタッフや患者を引き継ぐことで、経営や診療のスムーズな引き継ぎが期待できます。
さらに、M&Aを通じて新しい診療領域に迅速に進出する機会を得ることができ、事業拡大の戦略として有効です。
クリニックにおけるM&Aの価格相場
クリニックのM&A価格相場は、複数の要因により大きく異なります。以下に、価格を決定する際の主要な要素を挙げます。
1. 年間収益と利益率
クリニックの年間収益や営業利益率は、M&A価格の重要な指標です。一般的に、純利益の3年分から5年分を目安として価格が算出されることが多いです。収益性が高いほど、買収価格も上昇します。
2. 地域と立地条件
都市部や人口密集地に位置するクリニックは需要が高く、価格も高額になる傾向があります。一方、地方のクリニックは需要が限られるため、価格が抑えられるケースが見られます。
3. 診療科目と特殊性
診療科目の種類や、専門性の高さも価格に影響します。特に、地域医療に欠かせない診療科目を持つクリニックや、競合が少ない特殊分野のクリニックは高評価されます。
4. 資産と負債状況
クリニックが保有する設備や不動産の価値、負債の有無も価格に直結します。特に最新の医療機器を保有している場合や、クリニックの建物を所有している場合には価格が上昇します。
5. 患者数と地域内での評判
固定患者数や地域での信頼度は、収益の安定性を示す指標として重要です。患者数が多いクリニックは、買収後の事業運営がスムーズなため、高い価格で取引される傾向があります。
一般的な価格の目安
- 小規模クリニック: 数千万円~1億円程度
- 中規模クリニック: 1億円~3億円程度
- 大規模クリニック: 3億円以上
ただし、これらの相場はあくまで目安であり、実際の価格は専門家による詳細な評価を基に決定されます。クリニックの譲渡や売却を検討する際は、必ず専門のアドバイザーに相談することをお勧めします。
M&A(事業承継)の基本的な流れ
ここではM&Aの基本的な流れを譲渡側と譲受側の視点から解説します。
譲渡側のプロセス
- 初期相談・計画の立案
自院の現状を把握し、将来的な譲渡計画を立てる。専門家への初期相談が重要。 - 経営状況や資産状況の整理
財務諸表や資産台帳を整備し、クリニックの価値を明確にする。 - 適切な譲渡価格の設定
経営状況や市場相場を基に、妥当な譲渡価格を設定。 - 専門家や仲介会社の選定
税理士、弁護士、M&A仲介会社などの専門家を選び、適切なサポート体制を構築。 - 交渉・契約締結
譲受側との交渉を経て契約を締結。譲渡条件や価格を明確に定める。
譲受側のプロセス
- 市場調査と譲受戦略の策定
地域ニーズや競合環境を調査し、適切な譲受戦略を立案。 - 候補施設のリサーチと選定
譲受候補となるクリニックや病院を調査し、候補を絞り込む。 - デューデリジェンスの実施(財務・法務)
対象施設の財務状況や法的リスクを徹底的に調査。 - 譲渡価格交渉
調査結果を基に譲渡価格を調整し、双方が合意できる条件を模索。 - 契約締結と経営引き継ぎ
契約を締結後、経営の引き継ぎを実施。スタッフや患者対応も含め、スムーズな移行が求められる。
事業承継におけるポイント
事業承継を成功させるためには、譲渡側・譲受側双方で押さえるべきポイントがあります。以下では、それぞれの視点から重要なポイントを解説します。
適切な譲渡価額の設定
譲渡側は、クリニックの市場価値を正確に把握し、適切な譲渡価額を設定することが求められます。収益性や患者数、設備状況、立地条件などの要素を考慮し、公正な価格を導き出すことが重要です。
また、適切な評価を行うためには、M&Aの専門家による価値評価を活用し、透明性のある交渉が行えるよう準備することが大切です。
患者や従業員との信頼関係の維持
譲受側にとって、患者や従業員との信頼関係の維持は、クリニックの成功を左右する重要な課題です。譲受後も変わらない医療サービスの提供や、従業員との良好な関係の構築に努める必要があります。
地域住民の信頼を得るためには、経営理念や方針を共有し、患者に安心感を与える取り組みが求められます。
M&A仲介やアドバイザーの協力を得る
M&Aを成功させるためには、仲介業者やアドバイザーの協力が欠かせません。専門的な知識を持つプロフェッショナルが関与することで、適切な相手先の選定から交渉、契約締結までのプロセスがスムーズに進行します。
特に医療業界特有の手続きや法的要件をクリアするためには、信頼できるアドバイザーの支援が重要です。
法的リスクの確認
M&Aのプロセスでは、法的リスクの確認が必要不可欠です。譲渡契約に関連する法務や税務の問題を事前に洗い出し、リスクを最小限に抑える対策を講じることが求められます。
契約書の精査や規制の遵守状況の確認には、弁護士や税理士などの専門家の協力を得ることが一般的です。
地域特性の理解
事業承継においては、地域特性の理解が非常に重要です。地域住民のニーズや競合状況を把握し、それに適応した経営方針を策定することで、クリニックの継続的な成長が期待できます。
特に、地域に密着した医療サービスを提供する場合には、地域特性に応じた柔軟な対応が求められます。
まとめ
クリニックの承継におけるM&Aは、現代の医療業界が抱える課題を解決し、持続可能な運営を支える重要な手段です。譲渡側には新たな人生の選択肢を広げる機会を、譲受側には効率的な事業運営や新たな成長の場を提供します。
一方で、成功には慎重な計画と専門的な対応が不可欠です。適切な準備と信頼できるパートナーとの連携が、円滑で効果的な事業承継を可能にします。
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